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教室に戻ると優香はクラスメートたちの雰囲気が何となく妙だと思った。特に女子たちが、睨みつけるように一斉に優香の方を振り向き、何やらこそこそと喋り出したのに気がついた。最近ではもう彼女たちの間で優香は存在しないものとして無視するのが通常だったのに、一体これはどうしたことだろう。
(もうみんな知ってるんだ……)
優香は即座に悟った。しかし男子の方はそうではないらしかった。もし知っているなら女子より露骨にそのことを表すはずなのに、誰もそのようなそぶりを見せることはなかった。
5時間目の授業は体育だった。不安だったが何事もなく授業は済んだ。が、更衣室に戻って着替えようとすると制服がなかった。優香はすぐ辺りを見回した。女子たちは表向き知らん顔をしていたが、そっと優香の方を窺ってはくすくす笑うのだった。
「ねえ、誰か私の制服知らない?」
「知らない。てか何でうちらに聞くの?」
「いや、その……」
「誰か変態が盗んだんじゃない? あんたのあのいやらしいブログ見て興奮した男が」
するとまた一斉にくすくす笑う声。やはりもうみんな知っているのだ……
「違う! あれはあたしじゃないの! ねえ返して! どこにあるの?」
「知らねえよ!」
と言うと、千夏は突然優香に襲い掛かり、体操着を脱がしに掛かった。優香は必死に抵抗したが、すぐに二人の仲間が加わり、とうとう優香は体操着を奪われ白いパンツとブラジャーだけの姿にされてしまった。
「いやっ! 返して!」と優香は泣きながら叫んだ。
「なに、あんたの趣味のお手伝いしてあげるのよ」千夏が笑いながら言う。「ネタに困るといけないと思ってね。いい、今からあんたはその格好で教室に帰るのよ」
「やだっ! お願い! 私の制服返して!」
「教室に行ったら返してあげる。でももし次の授業に間に合わなかったら、ブログのことみんなに言うよ。先生にも、警察にも、テレビ局にもね。ばれたらどうなるか、もちろんわかるでしょ」
ばれたらどうなるか……優香は絶望の中で考えた。当然学校は退学。親に何て言い訳したらいいだろう。警察やマスコミに知られて話題にでもなれば、それこそもう日本では暮らしていけなくなるだろう。たとえブログをでっちあげた犯人が捕まったとしても、それで優香の恥が消え去るわけではないだろう……
「さあ、早くしないと休み時間終わっちゃうよ」
優香は渋々立ち上がる。他のクラスメートたちは、直接関わりたくないらしく、一人また一人と更衣室から出ていくのだった。
「大丈夫うちらが後ろから付いててやるから。もし誰かに何か聞かれても、何も言うんじゃないよ。最悪先生に見つかったら、自分でこうしてるんだと言いな」
こうして優香は下着姿のまま、もはや逃げ道もなく、更衣室を出た。二、三歩行くと背後で更衣室のドアの鍵が閉められた。まだその辺りはひと気のない廊下の、しかし空気が肌に冷たかった。
- 2010/06/09(水) 20:42:08|
- 優香
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