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羞人たち

趣味で書いた羞恥小説 18禁です。

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雑記 4

 皆さんお久しぶりです。当ブログ管理人の羞人です。

 この一週間ほど、数ヶ月ぶりに創作意欲が沸き上がり、連日作品を更新していたのですが、一昨日の例の地震で、一気に熱が冷めました。羞人の住んでいる神奈川もやはり揺れを感じましたが、羞人の身には何の問題もありません。その代わり訪れていた悪魔が心の中から去ってしまいました。

 一日も早い社会の安定を願うとともに、当ブログの読者の方の中に犠牲者のいないことを心よりお祈りいたします。

 ではまた、羞人の心へ悪魔が訪れる日まで。
  1. 2011/03/13(日) 13:58:09|
  2. 雑記
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優香 第十二章 13

 ついに始まってしまった騎馬戦。走り出した優香の乗る騎馬。騎馬はグラウンドの真ん中を、敵陣目指して一目散に駆けて行く。その勢いのよさに、優香は何度もバランスを崩し、騎馬の肩に掴まって胸を何度も丸出しの状態に晒さなければならなかった。

(どうしよう……とうとう始まっちゃったわ……)

 敵陣へ進む騎馬の上で優香が考えたことは、すぐに敵にやられてしまおうということだった。どうせ男女の力の差は歴然なのだから、無駄な抵抗はしないで、出くわした最初の相手にハチマキを奪わせてしまおうと思った。いや、味方の男子たちの反感を買わないためには、できることなら相手のハチマキをこちらも奪って、相打ちになるのが一番いい。それだけでもう女子である自分としては充分の活躍だろう。

 そんなことを思いつつ優香はもう避けることのできない戦闘のときを待った。

 やがてその瞬間は訪れた。敵の騎馬が優香たちのすぐ目前に迫ってきた。激突する集団と集団。と、その中の一人の男子が、優香の姿に目を止めた。

「よし、あいつだ! あの弱そうなやつを最初に潰すぞ!」

 そう騎乗の男子は命令を下す。するとすぐさま騎馬が優香の目の前に迫ってくる。

 その男子のあまりの勢い、あまりの殺気に優香は脅え、また相変わらず胸を隠そうと押さえたままだったので、ほとんど抵抗することもないまま、伸びてきた相手の手に、ハチマキを掴まれた。

 しかしそれは優香の計算通りだった。難なく相手にハチマキを掴まれてしまったが、腕を伸ばして接近するその相手の頭のハチマキも、こちらから奪えそうだった。つまり予定通りの相打ちに持ち込めるわけだ。

 そう思い優香は短パンを押さえていた左手を相手の頭へ向かって伸ばす。が、それはすぐさま相手の右手に掴まれてしまった。そこで、優香はしかたなく(ほんの一瞬のことなのだからと)胸を隠していた腕を、パッと離して相手の頭へ向けて伸ばした。相手の左手は優香のハチマキをすでに掴んでいるのだから、もはや抵抗されるはずはない。

 しかし、優香が押さえていた自分の胸から手を離した瞬間、突如目の前にこぼれ出た二つの大きなおっぱいを見た相手の男子は、たちまち目の色を変え、相手が女子であることに気がついた。

(どうして女子がこんなところに……! それも上半身裸になって、乳まる出しでいるんだ……?)

 するとその相手は掴んでいた優香のハチマキから手を離し、向かってくる彼女の腕を取って相手の顔をよく見ようとした。こうして向かい合った二人の両手は掴み合いの格好になった。目の前で揺れる女子のおっぱい。恥ずかしそうに赤くなったその顔。

「おい、お前は田辺じゃないか! 2組の田辺優香だろ!」
「やめてっ……手を離してよ。もう攻撃しないから、早くあたしのハチマキ取って……!」
「そうはいかない。もっとお前のおっぱいよく見てからな」

 そう言うと男は、自分の両手で相手の両手を掴んだまま、がら空きになった優香の裸の上半身(揺れる胸、ピンク色の乳首)を舐めるように観察しだした。優香は相手に手を掴まれ、もはや隠すことのできない自分の胸を、至近距離から男子に眺められて死ぬほどの恥ずかしさを味わった。そうしてまた手を離そうともがけばもがくほど彼女の柔らかい胸は大きく揺れた。

「へへへ、そうか。じゃあここは一つたっぷり遊んでやるか」

 やがて相手の男子はにやりと笑うと、優香の左手を掴んでいた自分の右手を、パッと離し、再び優香のハチマキ目掛けて伸ばしてきた。優香は身構えてハチマキを奪われる覚悟をした。

 が、その無警戒の頭に伸びてきた男子の腕は、空振りするように優香のハチマキを通り過ぎた。そしてその空振りした手が何と優香の丸出しの胸を掴んできた。

「いやぁぁッー!」

 優香は突然相手に胸を掴まれて悲鳴を上げた。だが相手はそんなことには構わず優香のおっぱいを鷲づかみにする。激しく揉まれる優香のおっぱい。指先でつままれる尖端の乳首……

「やめて……ちょっ、なにするのよ!」
「別に何もしてねえよ。空振りして体勢を崩しただけだよ!」
「じゃあ、もういいでしょ! あたしの胸から早く手を離して……!」
「わかったよ、はいよ!」

 と言うと男はおとなしく手を離したが、再びハチマキに伸ばした手を空振りさせると、もう一度、優香の今度は先程とは別の方の胸を鷲づかみにした。

「いやぁぁぁッー!」

 優香は必死に男子の手を振り払おうとするが、相手の太い腕は彼女の力ではびくともしない。そしてまた、相手が自分の胸を揉んでいる隙にそのハチマキを奪ってしまおうともするが、そこは相手も見逃さず、すばやく優香の手をかわしてしまう。

 こうして、優香は学校のグラウンドの真ん中で、上半身裸になったうえ、同級生の男子生徒から、胸を触りたい放題に触られ、揉み放題に揉まれてしまうのだった。
  1. 2011/03/10(木) 21:40:16|
  2. 優香
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優香 第十二章 12

 マイクが告げる選手入場のアナウンス。その合図とともに、門に集まっていた3年の男子生徒たちは一斉にグラウンドへ駆け出した。

 優香はその駆け出した集団のなかに紛れて、出来るだけ目立たないようにした。

 やがてグラウンドの両側に敵味方が別れる。笛が鳴らされ、全員騎馬の準備に取り掛かる。

「よし、じゃあ俺たちも組むぞ」

 と、優香と組むことになっている男子生徒が優香に言った。そしてすぐさま三人の騎馬が出来上がる。

「よし、田辺、できたから乗れよ」
「う、うん……」

 優香は歩み寄ると、騎馬の中央を走る二本の腕、つまり騎馬の座席に跨いで乗った。続いて足の裏を両側の繋がれた手の平に乗せる。

「よし、このまま立ち上がるぞ。バランス崩すなよ」

 すると優香を乗せた三人の男子が一斉に立ち上がる。と、片手で胸を、片手で短パンを押さえていた優香は男子の肩や頭などのどこにも掴まっていなかったので、その騎馬の急に立ち上がった衝撃で体勢を横に崩してしまった。

「きゃっ!」

 優香はとっさに腕を伸ばして目の前の男子の肩に掴まった。が、そのため隠していた彼女のおっぱいが両方とも白昼のグラウンドで丸出しになってしまった。

「いやぁっ!」

 と再び悲鳴を上げたがそれは最初のとは違う意味の悲鳴であった。

「おい、危ないからしっかり掴まってろよな! 頭から落ちて怪我しても知らねえぞ」

 そう本気で注意され、優香はやむなく両手で目の前の男子の肩に掴まって騎馬の立ち上がるのを待った。まる出しの彼女の大きなおっぱいが、熱気に包まれた男子生徒の集団のなかで、おびえるように小さく揺れた。

「お、田辺のおっぱい丸見えじゃん!」と、隣の騎馬から男子生徒の声が飛ぶ。
「相変わらずピンク色のキレイな乳首してんなあ!」
「ほらほら、しっかり掴まってないと危ないよ。恥ずかしがらずにもっとじっくりおっぱい見せてくれよ」
「ホントしゃぶりつきたくなるおっぱいだよな」

 優香はそんな露骨な言葉を掛けられて、恥ずかしさに耳まで真っ赤になったが、それでもまたバランスを崩したら危ないので、おっぱい丸出しの状態のまま、騎馬が立ち上がるまでは男子の肩にしっかり掴まっていなければならなかった。

(やだ……恥ずかしい……!)

 やがて騎馬が立ち上がった。立ち上がった騎馬の上は予想した以上の高さだった。その高みからだとグラウンドの遠くの観客席や、生徒席が完全に見渡せる。観客席に集まったたくさんの保護者、友人、知人たち。また生徒席から黄色い声援を送っている同級生、後輩の女子生徒たち……。つまり、こちらからこんなにはっきり向こうの人々の姿が見えるなら、同じように向こうからもこちらの姿がはっきり見えるはずだった。

(いやッ、みんな見ないで……! 誰もあたしに気づかないで……!)

 優香は騎馬が立ち上がるとすぐに再び胸を隠した。

「ねえ、もっとあっちの、列の真ん中の方に行ってくれない……?」
「なんでだよ、ここの方がいいじゃんか。あんな中央のごみごみしたところにいたら横から相手に挟み撃ちされんぞ」
「それはそうだけど、やっぱり、恥ずかしいから……」
「あ? なに今さら恥ずかしがってんだよ。もう朝からさんざん観客におま〇こ見せてきたじゃねえか。あのみっともないブルマーの切れ目から、ションベンまで洩らして……もう胸の一つや二つ見られたって別に恥ずかしいわけないだろ」

 その言葉に優香の顔は火が出るほど赤くなった。

(もう胸の一つや二つ……こんな大勢の観客の前で……恥ずかしいに決まってるじゃない……!)

「ねえ、お願い……スタートするまでの間だけでも、なるべく真ん中の方にいさせて。お願いだから……」

 優香はもうほとんど泣きそうな顔をして頼むのだった。

「ったく……しょうがねえなぁ! わかった移動してやるよ。でも、スタートのときだけだからな。スタートしてからは知らねえよ」

 優香はできればスタート後もずっと人込みの中に紛れていたいと思ったが、あまりわがままを言うと相手を怒らせてしまいそうなので、ここはとりあえず折れるしかなかった。

「うん、ごめんね。勝手なことばっか言って……」

 やがてグラウンド上の他の騎馬も次々と出来上がってゆき、段々と、競技開始の準備が整っていく。

 優香は腰から上が完全に突き出た騎馬の上で、不安げに、そのときを待ち構えていた。突き出た彼女の裸の上半身に、明るい秋の日差し、秋の乾いた風がまともに当たる。優香はもう一度自分の胸を見下ろして、乳首が腕からはみ出してしまっていないかを確認した。腕に押し潰され谷間の出来た大きな乳房……それは自分で見てもいやらしい映像だった。


 やがてピーッという笛の合図がスタートのときを知らせた。そして緊張と静寂の一瞬の後、ついにピストルが鳴らされ、騎馬戦がスタートした。

 ダーッと一斉に敵陣に突き進んでいく味方の騎馬たち。グラウンドの向こうからも、たくさんの騎馬がこちらへ勢いよく駆けてくる。

「よし、俺たちも行くぞ!」という男子の声とともに、優香たちの騎馬もスタートして走り出した。
  1. 2011/03/10(木) 08:54:04|
  2. 優香
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優香 第十二章 11

 入場門にはすでに大勢の男子生徒が騎馬戦の開始を待って並んでいた。上半身裸の、太っていたり、痩せていたり、筋肉質だったりと、それぞれ異なる体だったが、骨格のたくましさ、肉の付き具合などは、やはり明らかに女子とは違っていた。

「ねえねえあれ、三井先輩じゃない? バスケ部のキャプテンだった」
「きゃー、ホントだ。胸の筋肉かっこいい~!」
「で、その隣は、長島先輩よね?」
「いや~ん! 細いけど、付くべきところにちゃんと肉が付いてて、ほら、あの割れた腹筋、触りた~い!」
「あんた後で触らせてもらいに行きなよ。先輩の腹筋、すりすりさせてくださいって」
「やだ~、恥ずかしい~! あんたが頼んでよね」
「え~、あたしだって恥ずかしい~!」

 などと、憧れの先輩の裸を遠目から観察する後輩の女子たちだった。

 ところで優香の所属する3年2組の男子には、その日ひとりの欠席者がいて、四人一組で作る騎馬が、一体作れないという状況になっていた。

「弱ったなー、これじゃひと組足りないことになるぜ」
「誰か代わりのやついないのかよ。後輩とか、誰でもいいから」
「そういえばさっき千夏が助っ人呼ぶとか言ってたぞ」
「千夏が? 助っ人?」
「でもそんなやつどこにもいねえじゃねえかよ。もうすぐ騎馬戦始まっちゃう……」

 と、そのとき、一人足りない騎馬についてあれこれ話し合っていた3年2組の男子のところに、顔を伏せ、胸を隠した一人の見慣れない生徒がやってきた。

「あの……騎馬戦に……参加するようにって……言われて……」

 その生徒はどうやら急いでやって来たらしく、肩でハアハア息をして、声も何だかうわずってしまっている。自分たちと同じように白い短パン、上半身裸の姿であるが、その体つきは、何だか妙な丸みを帯びていて、背も男にしてはかなり小さい。なんだ、弱っちい野郎だな、と2組の男子たちは等しく心の中で思ったが、期待外れの助っ人であるにしろ、とにかくいないよりは全然マシだ。

「お前が噂の助っ人ってやつか? 俺たちちょうど困ってたところだったんだ。助かるよ」

 と、そのとき横にいた一人の男子が、何かに気づいたらしく、その、助かると言った男子生徒の肱を突いて耳打ちした。

「おい、あれ、見ろよ……」

 と、彼がアゴで示した方を見てみると、その助っ人の、腕で隠した胸からは、明らかに女の、大きな、柔らかそうな乳房の肉が、細い腕では隠しきれずに、ぷりんとはみ出てみえていた。また、片方の胸などは(おそらく走ってきたために)もう完全に乳房が腕から飛び出てしまっていて、ピンク色の、咲き誇る乳輪、それからピンと突き立つ可愛らしい乳首が(何ともいやらしく)丸出しになって見えていた。

 やがて他の男子たちもそのことに気づき出し、不審と、興味と、欲情の渦が集団の中に広がっていった。

「おい、お前、田辺だろ? 俺たちの組の女子の田辺優香だろ?」

 するとたちまち『田辺優香』というその言葉がクラス中に広まっていく。

(優香? なんで田辺がこんなところにいるんだよ?)
(上半身裸だぜ。本気であの格好で騎馬戦やるつもりかよ)
(おっぱい丸見えじゃねえか。あれ、わざと見せてると捉えていいんだよな?)
(やべっ! おれ勃ってきた。こうなったらもう騎馬戦どころじゃねえぜ)

「なあ、もう一度聞くけど、お前、うちのクラスの田辺優香だよな?」

 と、相手が黙ったままだったので、先程の男子がもう一度問いかけた。

「いや、あたしは……あの……はぃ、そぅです……」

 顔を真っ赤にして答える優香。男子たちの興奮、欲情、いやらしい視線が、いまやすべて自分の体に注がれていることを彼女は感じた。

「なんで女子のお前が騎馬戦に参加するんだよ? これは男が出る競技だぜ」
「その……先生に、出ろって言われて……」
「お前先生に言われたら何でもやるのか? 言われたら上半身裸にでも全裸にでもなるっていうのかよ?」
「いえ……そんなことは……」
「だったら何で出るんだよ? お前、そんなこと言ってホントは自分で出たいと思って来たんだろ?」
「そ、そんなこ……」
「みんなの前で上半身裸になりたくて、それでそんな、乳まる出しの、エロい格好して来たんだろう?」
「え……? いやッ……!」

 言われて優香はやっと自分の片方の胸が腕からはみ出してしまっていることに気がついた。はみ出たピンク色の乳首を、慌てて腕で隠そうとするが、隠したと思ったら、今度はもう一方の乳首が出てしまうといった具合で、なかなか上手く隠し切れなかった。その様子を見つめていた男子生徒たちは、優香の大きな二つの胸が、目の前で、腕に押し潰されたり、ぷりんと腕から飛び出たり、ぷるぷる柔らかく揺れたりするたびに、からかいの奇声や口笛を発するのだった。

「ホントどうしようもない変態だよな」とやがて一人の男子が言った。
「先生に言われたからなんて嘘つかないで、やらしてくださいって最初から俺たちに頼めばよかったのに」
「う、嘘なんかじゃ……本当にあたし……」
「ハイハイ、わかったわかった。そういうことにしておいてやるよ。で、お前ホントに出るつもりなんだよな?」
「はぃ……」
「だったら俺たち別に断わりはしないぜ。ちょうど人数足りないで困ってたところだったんだから、出るって言うなら女でもジジイでも俺たち構わないわけだ」
「はぃ……あ、あの、できればあたしは、下で支える方にしてもらえませんか?」
「下……? お前は上に決まってんじゃん。女の力で支えられるかよ」
「でも……! あたし、こう見えても力はある方だし。三年間テニス部で……」
「ダメだな。やっぱり体重の軽い女のお前は上に乗った方がいい……それにさあ、お前、そんなぶかぶかの短パン穿いて、下で支えるとなると、やばいんじゃない? 両手ふさがっちまうんだから、そのうち脱げちまうぞ」

 その言葉に優香はハッとなった。相手の言った言葉はもっともだった。もし自分が騎馬の下になるとすると、両手はふさがってしまうことになり、ウエストの緩いこの短パンは、進んでいるうちにずるずる下へ、ずり下がって、下着を穿いていない自分の股間とお尻が、まる出しになったまま、それを直すこともできないだろう……

「あの……やっぱり上でお願いします……」

 と優香は言った。騎馬のもっとも目立つ上の乗り手に、自ら志願したという形になってしまった。

「よし、そうとなりゃ俺たち全力で助けるぜ!」
「ピンチのときは、すぐに行って守ってやるからな」
「お前は俺たちが守ってる隙を突いて相手のハチマキを奪うんだ、いいな?」
「は、はぃ……」

 自分を守ってくれるというその男子たちの熱意に満ちた言葉や態度に、優香は感謝の気持ちを抱くとともに、何だかわからない悪い予感を、感じずにはいられなかった。

 そしてその悪い予感は、この後、見事的中することになる。


 やがてグラウンドのマイクが、選手入場のアナウンスを高らかに響かせる。
  1. 2011/03/09(水) 20:40:31|
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優香 第十二章 10

 ついに騎馬戦に参加することを決意した優香。短パン、ハチマキ、上半身裸で、これからグラウンドへ向かっていかなければならないわけだ。

 優香は右手で短パンのウエストを、ずり下がらないようにしっかり押さえる。そして左腕で上半身裸の胸を、大きく膨らんだ二つの乳房を、それとわからないよう何とか隠す(遠目に男子生徒として見えることを願いながら)。

 そうして準備が整ったらようやく出発。この校舎の裏のひと気のない通路から、人の大勢いるグラウンドへと、飛び込んで行く覚悟を心に決めて。

 優香はまず通路の奥の校舎の横手へ出る場所へ進んでいった。そこの生け垣の後ろに身を隠して、前方の、校門とグラウンドを繋ぐアスファルトの通りの様子を窺った。

 そこにはやはり道を行き来する観客が、絶え間なく、グラウンドの方へ消えてはまた現われた。いずれも秋ののどかな一日に行なわれる高校の体育祭を観に、平和そのものの表情をして笑ったり喋ったりしながら歩いている。その平和な光景の真っ只中に、いまから自分は、上半身裸のこの姿で、飛び出して行くのだ。人々の平和な顔が自分の姿を見て突如凍りつくかもしれないと思うと、優香の決心は再び揺らぎ出す。

(いや、大丈夫……! 走っちゃえば気づかれはしないわ。全速力で、新幹線みたいに速く走れば、体の輪郭はたぶんぼやけて見えるだろう、たぶん……)

 そう再び決心すると、優香はその、新幹線みたいに速く走り出す(そんなことが可能ならば)タイミングを、生け垣の裏から、じっと窺っていた。

 数分後、ついにそのタイミングはやってきた。それはある意味これ以上ない最高のタイミングといえた。飛び出そうとしているその道に、そのとき突如上半身裸の男子生徒三人組が現われたのだ。紛れもなく優香と同じ格好の、騎馬戦に参加する男子生徒たち。日焼けしたたくましい背中を三つ並べてグラウンドの方へ向かって歩いていく。他に通行人はたくさんいたが、飛び出すなら今しかない、優香はそう思った。今ならあの三人の裸が、自分の裸を(色が白くて華奢ではあるが)違和感なくしてくれるだろう。

 優香はそう思うと同時に生け垣の後ろから立ち上がり、スタートの体勢を整える。そして左腕でしっかり乳房を押さえ直すと(うっかり片方の乳首がはみ出てしまっていたからだ)、ついに表へ向かって駆け出した。

(お願い……! 誰も気づかないで……!)

 新幹線、いや、自分の中ではジェット機よりもなお速く優香は走った。そのせいでせっかく押さえ直した片方の乳首が、乳房もろとも、ぷりんと外にはみ出てしまったが、夢中で走る優香は自分でそのことにまったく気づかなかった。今はとにかく速く走ること、速く走って自分の姿をぼやけさせること……優香の頭はその考えでいっぱいだった。だから自分の肩まで伸びるツヤのある髪が、女性らしく後ろへサラリとなびいていることにも気づかなかった。

 が、その優香の姿を見た人々の実際の反応はどうだったかというと、人間の抱く先入観とは単純なもので、この目の前に突如現われ、背中を見せながら走り去っていく、白い短パン姿の、上半身裸の生徒を見て、これはその同じ道を歩いている裸の三人と同じ男子生徒だろうと勝手に思い込んでしまった。まさかそれが女子生徒だとは夢にも思わなかった。まあ、それも当然といえば当然の話で、上半身裸の女子生徒がいきなり自分の前に飛び出してくるなんて、にわかには信じられないことである。

 もうすぐ始まる騎馬戦の、その集合場所へ向かって歩いていた男子生徒三人は、いま猛スピードで自分たちを追い抜き、走り去っていく、上半身裸の生徒の背中を見て、話し出した。

「あれ、あんなやつ3年にいたっけ?」
「さあ、速くてわかんねえや」
「細っせ~体! 女みてえな野郎だな」
「長髪で、後ろから見たら完全女だよな」
「あんなやつ、騎馬戦始まったら真っ先に叩き潰してやんよ」
「おいおい、あんまり無茶して怪我させるなよ……」
「わかってるよ、冗談だよ、ハハハッ」
「だよな、ハハハッ……」

 こうして、上半身裸でグラウンドへ向かって行った優香は、自分が女であることを一応誰からも気づかれることなく、まずは順調に滑り出した……といえるだろう。

 しかし言うまでもなく、地獄の入口、そして本当の地獄が、このすぐ後に、彼女を待ち受けているわけである。
  1. 2011/03/08(火) 20:58:07|
  2. 優香
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優香 第十二章 9

 紙袋の底から優香が最後に見つけ出したもの、それは騎馬戦に参加するよう命令した田崎からの手紙だった。しかし、その同じ紙袋に入っていた衣服といえば、男子用の短パンと、赤いハチマキの二つだけ。もし出場するとしたならば、体操着を失った現在の全裸の優香には、他に着るものは何もない。

 優香は校舎の裏のひと気のない通路にしゃがみ込んだまま、膝に顔を埋め、しばらく何を考えるでもなく、絶望に心を浸し切っていた。

 そのまま数分が過ぎ去った。

 と、やがて彼女の耳に、遠くグラウンドの方から、高らかに響き渡るアナウンスの声が聞こえてきた。

「午前中最後の競技、騎馬戦に参加する3年生男子は、シャツを脱いで入場門に集合してください」

 優香はハッと顔を上げた。

(行かなきゃ……でも……)

 そして不安な眼差しで持っていた白い短パンの方を見る。これを穿いてグラウンドへ行くのだ。男子生徒用の体操服。だがシャツはない。つまり他の男子生徒同様上半身裸の状態で、グラウンドへ行き、男子生徒たちと一緒に騎馬戦に参加しなければならないのだ。しかし自分は彼ら男子生徒たちとはある点において決定的に違っていた。彼らは男で、上半身裸の姿を人から見られたところで特に何とも思わないだろうが、女である自分は、この大きく膨らんだ二つの胸を、一体どうしたらいいんだろう……?

(行けない、絶対に……行けるわけがない……!)

 しかしこのまま参加しないとなると、彼女の身にはさらなる悲劇が待っている。怒り狂う田崎に探し出され(どこに隠れていようと必ず見つけ出してしまうだろう)そして裸のまま、力ずくで、無理やりグラウンドへ引っ張っていかれることになるだろう。観客生徒全員の前に、一糸まとわぬ姿で、露出狂として、連行されてしまうことになるのだ。

 それだけは何としても避けなくてはならない。朝からさんざん彼女の醜態を見続けてきた観客に、体操服を失くした(田崎によって盗まれた)などという彼女の言葉が、果たして信じられるだろうか? いや、信じるはずがない。信じるどころか、むしろ全裸で田崎に引っ張られてくる彼女の姿を見て、露出狂の、動かしがたい証拠を、そこに発見することになるだろう。

 優香に残された選択肢は二つしかなかった。

 つまりこのままここ(あるいは屋上に、トイレの個室に、いや、どこだって同じだ)に隠れて、やがて見つけ出されて全裸でグラウンドに連れて行かれるか(露出狂として)。またはこの白い短パンを穿いて、同じ上半身裸の男子生徒の集団に紛れて、騎馬戦に参加するか。どちらが懸命な判断と言えようか?

 明らかに後者の選択肢だった。

 男子の集団の中にいればあるいは(少なくとも)観客席からは、そこに女子が一人紛れ込んでいることがわからないかもしれない。騎馬戦という絶えず大勢が動き回っている激しい競技の中で、その中に同じ格好をした女子生徒が一人くらいいたところで、遠目にはわからないのではないだろうか?

 突如頭に浮かんだこのわずかな可能性に、優香はすがってみたい気持ちになった。いや、もはやこの可能性にすがるしか道は残されていなかった。

 優香はそれでもまだしばらくこの可能性についてあれこれ吟味して迷っていたが、やがて決心して立ち上がると、先程からずっと手に持って眺めていた、その男子用の白い短パンに、おそるおそる足を通した。

 長らく全裸でいた優香には、久しぶりに穿いた衣服の感触が温かかった。また朝から穿き続けてきた切れ目入り極小サイズのブルマーとも違って、お尻は隠れる、股間も、もはやむき出しになっていないこの短パンの生地の大きさは彼女に予想外の安堵を与えた。

 しかし、続いてハチマキを巻こうと両手を頭に持っていった彼女は、ふとある事実に気がついた。

 短パンの腰から両手を離した途端、それがずり下がってくるではないか。

 優香はずり下がった短パンを急いで上へ持ち上げる。と、再び両手を離した途端に、それはゆっくり下へずり下がる。明らかに、それはサイズが大きかった。あるいはウエストのゴムが伸びていた。

 優香は短パンがずり下がらないよう地面に座ってハチマキを巻いた。そして立ち上がると、短パンのウエストを持ってずり下がらないようにした。ちょっとでも手を離すと、短パンはすぐに腰まで下がって、お尻の割れ目が丸見えになってしまう。つまり常に手で押さえていなければならないのだった。しかし言い換えれば、押さえてさえいれば(そのために片方の手が犠牲になってしまうが)ずり下がる心配はないわけだった。

 優香は不安な思いを抱きはしたものの、常にどちらかの手で押さえていれば大丈夫だと自分に言い聞かせて、不安を追い払ったが、後にこのことが、取り返しのつかない恥辱となって彼女に襲いかかってこようとはまだ知るよしもなかった。

 グラウンドへ向かう前に、首輪とビデオカメラを処分するという仕事がまだ彼女には残っていた。

 どう処分したものかとしばらく思案していたが、他にいい案が見つからないので、とりあえず生け垣の地面の土を少し掘ってそこに埋めておくことにした。今はとりあえずここに隠しておいて、後でまたじっくり考えればいいだろう。念のためビデオカメラは石に叩きつけてメモリーと思われる個所を壊しておいた。

(ふう……)作業を終えた優香はホッと一息。(これでひとまず安心かな……?)

 これで、心置きなく、グラウンドへ向かえるわけだった。
  1. 2011/03/08(火) 08:24:00|
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優香 第十二章 8

 走り去る少年を見送る優香。しかしその心は、少年から受け取った紙袋のことで、不安でいっぱいになっていた。

(なんだろう……?)

 やがて少年の姿が見えなくなると優香は思った。そして紙袋をちょっと持ち上げてみて、その重さを確かめる。

 軽い。まるで何も入ってないようだ。

 しかしわざわざ子供を使ってまでして届けたのだから、何もないなんてことはあり得ない。何かしら、必ず、この紙袋の中に、入っているはずだ。

 そう思うと優香は意を決して紙袋の中を覗き込んだ。それがどんなものであれ、いまの素っ裸の状態よりはマシだと思ったからだった。胸も性器もまる見えの、この生まれたままの姿よりは……

 白い衣服のようなものがまず見えた。それを見た優香は、何であれ中身が衣服であったことに、とりあえずホッとする。

 そして紙袋の中にそっと手を入れ、その、白い布製の衣服をおそるおそる取り出した。

 優香は一瞬ハテナと思った。彼女がおそるおそる取り出したその白い衣服とは、この学校の、男子生徒用の、白い短パンだったからである。特に細工が施されているわけでもない、標準サイズの、白い短パン……

(なんで男子の短パンが……?)

 と不思議に思いながらも、優香は紙袋の中にまだ何か入っていないかと思って手を突っ込む。

 続いて彼女が取り出したのは、赤いハチマキ。使い古され、少し色褪せた、だが何一つ変わったところのない学校の備品のハチマキだった。

(ハチマキ……? どうしてハチマキなんだろう……?)

 しかし考えている暇はない。そして紙袋の中に残っている物をさっさと取り出そうとする。

 が、それで終わりだった。紙袋の中に入っていたものは、その二つですべてだった。いや、底の方に、微かな紙の手触り……優香は顔青ざめながら、その一枚の紙切れを取り出した。

 それは彼女に宛てた手紙だった。鉛筆で簡単に次のように書かれていた。

『もうすぐ騎馬戦が始まる。これを着て参加するように。もし不参加だった場合は、教師生命のすべてを賭けて、お前を探し出し、裸のまま、グラウンドへ連れていく』

 そして手紙の最後のところには『田崎』という署名が、はっきり大きく書かれていた。

 優香は頭が真っ白になった。体の力が抜け、そのまま地面にしゃがみ込んだ。そうして、しばらくそのままの体勢で、膝の中に顔を埋め、目を閉じて暗闇に心を浸していた。

 その手には、男子用の白い短パンと、騎馬戦用の赤いハチマキが、今ははっきり理由がわかったうえで、力なく握られていた。
  1. 2011/03/07(月) 08:21:06|
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優香 第十二章 7

 裸のままついに校舎の玄関から飛び出した優香。人に気づかれないうちにと、全速力で走り出す。走りながら大きな胸がぷるぷる揺れる。秋の冷たい風がむき出しの股間に吹き抜ける。

 彼女は校門から遠ざかるように、玄関を出ると、右手へ向かって走って行った。そっちの方が遠回りだが、門から離れているため、いつも人通りはほとんどなく、見つかる心配も少なかった。

 優香は校舎の端に向かって一目散に走った。運は彼女に味方した。校舎の壁の端にたどり着くまで、誰とも出会わず、誰からも気づかれずに済みそうだった。あの校舎の角を曲がって裏手へ行きさえすれば、人に見つかる可能性はぐんと低くなる。

 そして優香は角を曲がった。また少し走ってもう一度角を曲がると、校舎の裏側の、生け垣に囲まれた狭い通路に入り込む。

 もうここまで来ればまず一安心だった。この狭い通路は、普段からめったに人が通ることがなく、さらに今は体育祭の真っ最中なので、生徒が通る可能性は極めて低かった。ひと昔まえなら不良の溜まり場にでもなっていそうな場所だったが、今はもうそんな時代でもない。

 ここで優香はやっと走るのをやめた。そしていったん乱れた呼吸を整え直すと、高鳴る心臓を手で押さえながら、捜索を開始する。

(必ずここのどこかに落ちているはずだわ……落ちてなきゃ、困る……!)

 優香は首をあちこち振って探し歩いた。生け垣の上、木の枝の間、細い溝の中までも……

 しかし体操服はなかなか見つからなかった。通路の3分の2を過ぎても、彼女のTシャツ、ブルマーは、どこにも落ちていなかった。

 徐々に優香の顔が引き攣っていく。やがて何の発見もないまま突き当たりまで行き着いてしまうと、彼女の頭は半ばパニックに陥ってしまう。

(おかしい……! なんで? ここにないはずないのに……絶対どこかに落ちてるはずなのに……きっと見落としてしまったんだわ……もう一度よく探してみなきゃ)

 そして振り返って同じ道を戻っていこうとする。

 と、そのとき、後ろを向いた彼女の目に、一人の人間の姿が映し出された。

「きゃっ……!」

 優香は急いで逃げようとしたが、よく見るとその目の前にいた人物というのは、小学3、4年生くらいの、一人の小さな少年だった。少年は手に紙袋を持ち、優香の体を不思議そうに見つめながら、そこにじっと立っている。

「あのね、この紙袋を、お姉ちゃんのところへ届けるようにって言われてきたの」

 と少年は話し出した。

「紙袋を……? あたしのところへ……?」
「うん。このあたりで裸のお姉ちゃんを見つけたら、これを持って追いかけていって、ええっと、その裸のお姉ちゃんに、これを、渡すように頼まれたの」

 動揺のため胸を隠すことを忘れていた優香は、少年のその『裸のお姉ちゃん』という言葉に、自分の胸がまる見えになっていることを気づかされ、慌てて胸と、それから股間も、手で隠した。

 優香は恥らいながらも、少年ににっこり笑いかけてみせ、それから優しく訊ね始めた。

「ねえ、ちょっとお姉ちゃんに教えてくれない? その、ボクに頼んだ人というのは誰? 誰がその紙袋をあたしに届けるように言ったの?」

 少年は迷うことなく答えた。

「田崎っていう人」

 それを聞いた優香の体は途端にぶるぶる震え出した。

「田崎……? ねえ、それって、田崎先生のこと?」
「先生かどうかはボク知らない。でも、田崎からだと伝えろって、その人ボクに言ったの」

 田崎……優香の知っている人間の中で、田崎という名を持つ者は一人しかいなかった。

(そうか、わかったわ……なにもかもあの人の仕業だったのね)

 しかし実際は、田崎本人はこのことについて何も知らなかった。少年に声を掛けてもいないし、そもそも優香がいまどこで何をしているのかを知ってすらいなかった。

 では、少年に田崎と名乗った人物というのは一体誰なのか?

 そう、答えは千夏だった。千夏が、この、たまたま見つけた少年に声を掛けて(たっぷり小遣いを与えたうえで)優香に紙袋を届けるように依頼し、また自分は田崎という名前であること、それ以外のことは何も教えてはならないと、固く約束させたのだった。

 しかしそんなこととは知らない優香は、これはもう完全に田崎の陰謀なのだと信じきってしまった。

「で、ねえ、その田崎っていう人は、他に何か言ってなかった?」
「ううん、他にはなんにも」
「そう……」そして優香は少年の持っている紙袋の方を見る。「ねえ、その袋……中には何が入ってるの?」
「さあ、知らない。自分で調べてみればいいじゃん。はい、これ」

 と言ってその黒い紙袋を優香に手渡す。

 優香は紙袋を受け取ると、しかしすぐに中身を調べようとはしなかった。代わりに再び少年に話しかけた。

「じゃあ、ボクはもう用が済んだのね? 用が済んだのならもう行ってもいいのよ。わざわざ届けてくれてありがとね。それから、ここにお姉ちゃんがいたことはみんなには内緒にしておいてくれない? いい子だから、二人だけの秘密ってことに、できるよね?」

 そう言うと優香は手で少年の頭を優しく撫でた。再びまる見えになった優香のおっぱいが、少年の目の前で、やわらかく揺れる。

「うん、誰にも言わないよ」と少年は誓った。
「ありがとう……そうしてくれたら、お姉ちゃんホントに助かる」
「でも、どうしてお姉ちゃん裸なの? お風呂でもないのに、寒くないの?」
「え……? いや、これは、その……」
「それにどうして首輪なんかつけてるの? 首輪って犬につけるものでしょ? それともお姉ちゃん、何か悪いことでもしたの?」
「え? いや、これは違うの……!」

 言われてようやく首輪をつけたままだったことを思い出し、優香は慌ててそれを首から外した。

「ううん。これは何でもないの。それにお姉ちゃんは何にも悪いことしてないよ……さあ、いい子だから早くお母さんのところへ戻りなさい。きっと今ごろ心配してるよ」

 それでも少年はまだしばらくのあいだ、優香の色気たっぷりの大人の体を珍しそうに眺めていたが、やがて「うん、わかった」と言って振り返ると「じゃあね」と言い残して走り去っていった。

「じゃあね、バイバイ……」

 と手を振って少年を見送る優香だったが、もう一方の手に持った紙袋の存在が、彼女の心を不安でいっぱいに満たしているのだった。
  1. 2011/03/06(日) 13:20:43|
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優香 第十二章 6

 教室の廊下でついにおしっこをしてしまった優香は、しばらく茫然と自分の出したそのおしっこの水たまりを眺めていた。

「さあ、トイレも済んだことだし、散歩を再開しようか」

 その男の声によってようやく彼女は我に返った。

 そして再び散歩を続ける。自分の出したおしっこをそのままの状態で廊下に残して、屈辱の犬歩きを再開し始める。歩きながら、紙で拭いていないおま〇こからはしばらくポタポタと雫が垂れていた。廊下に点々と続くその雫。また涙の雫も点々と。男はそのポタポタ垂れる二つの雫を、後ろから、何も言わずただ満足そうににやにや眺めて歩いていた。

 やがて長かった廊下も渡り終え、向こう側の階段へたどり着いた。あとはもうこの階段を下るだけ。階段を下りたらゴールである下駄箱はもうすぐ近くだ。優香は一刻も早くゴールにたどり着きたいと思う。一秒でも早くこの男から解放されたいと心から願う。

 が、そう思って優香が階段を下りようとしたところを、再び男が引き止めた。

「いよいよもう本当にゴールだね。たぶんこのまま行けば、君はルール通りにゴールすることができるだろう。でも、このままでは僕の欲望は発散されない。欲望が発散されないまま別れることになる」

 そう言うと男は、自分のズボンに手を掛け、それを下着と一緒に床まで下ろした。硬直した男の性器が優香の目の前に現われた。

 きゃっ、と思わず優香は悲鳴を上げそうになったが何とか抑えた。そして男のものを見ないように顔をそむけた。が、その顔を男は手で無理矢理また性器に向かせてしまう。

「な、わかるだろう?」と男は言った。「しゃぶれよ、な、フェラだよ、フェラ」

 優香はまた首を横に振るが、もうその振り方には先程までの勢いがない。首を振っても無駄であることを彼女は充分承知していた。

「本番をやらないだけでも感謝しろよな。さ、早いとこやってくれよな。爆発しそうなほど溜まってるんだ。してくれるまでゴールにはたどり着けないぞ」

 優香の目の前でピクピク脈打つ男の性器。それを無理やり見させられながら優香はしばらく考えていた。

(どうしよう……これを口に入れるなんて、絶対にやだ……気持ち悪い……!)

 絶体絶命のピンチ。優香はなかなか決心がつかなかった。

 が、やがて優香の口が大きく開いた。そしてそのまま、男の硬直した性器の方へゆっくり向かっていった。

「よし、やっと決心したか。優しく頼むぞ」

 と、そのとき男の紐を握っている手の力が少し緩んだ。その隙を狙って、優香はパッと床から立ち上がった。

「あ、立ち上がった! アウト! 最初からやり……」

 しかし男が言い終わる前に、優香は彼の股間を思い切り下から蹴り上げた。本当はこんなことはしたくなかったのだが、しょうがなかった。また、他人を蹴るなんてことは初めての経験だったので、力加減がわからず、結果的に必要以上のダメージを相手に与えることになった。

「うぅぅぅ……」

 苦痛に顔を引き攣らせながら倒れ込む男。もだえながら、首輪の紐も、ビデオカメラも、手から離してしまった。その手から離れたビデオカメラを優香はすかさず拾い上げる。首輪の紐も奪い返されないよう自分の手にしっかり握る。

「ごめんなさい……あたし、こんなに強く蹴るつもりじゃ……」

 と優香は相手を心配して言ったが、しかし今はそんな謝っている場合ではなかった。

 優香は廊下を転げまわる男を残してその場を立ち去った。

 こうして、優香は変態カメラ小僧から解放されたわけだった。


――――――――――――――――――――――――


 男をやつけることには成功したが、優香のピンチはまだ終わったわけではなかった。そう、彼女はいまだ全裸のままであり、身を隠す布切れ一枚持っていないのだ。消えた体操服を探すという困難な任務がまだ残っている。

(急がないと、昼休みになっちゃうわ……でも、一体どこにあるんだろう?)

 あるとすれば、消える直前まで干してあった屋上の手摺りの真下、つまり校舎の裏側の地面に、それは落ちているはずだった。

 しかしその校舎の裏側へは、玄関を出て建物の壁沿いにぐるっと回って行くしか道はなかった。

(玄関を出て……? この今の裸の格好で……?)

 その、突如目の前に突きつけられた不可避の事実に、優香の顔色は一瞬のうちに青ざめる。

(できない、そんなこと…… だって、人がいるかもしれないし、それに、玄関の向こうは、外よ……)

 しかし消えた体操服は絶対に見つけ出さなくてはいけなかった。昼休みに生徒たちが校舎に戻ってくる前に、何としても……

 それにまた、二階に残してきた男も、いつ回復するかわからない。回復すればきっといま自分が持っているこのビデオカメラを取り戻しにくるだろう。

 つまり今の彼女には迷っている時間など一秒もなかった。

 そう思うと、優香は急いで残りの階段を駆け下りて(首輪をまだつけていることを忘れていて、垂れ下がるその紐を片手で握り締めながら)一階の廊下を抜けると、下駄箱の方へ、忍び足で向かっていった。カメラの処分も後回しだ。まずはとにかく、胸も股間も丸出しの、この生まれたままの姿を何とかしなければならない。

 優香は人の気配がないのを確認して、下駄箱の、自分の靴が置いてあるところまで走って行った。

 そこですばやく靴を履き替えると(全裸に運動靴を履いている変な感じ……)次に、玄関の敷居から顔だけ出して外の様子を窺った。この学校の門は、玄関から左手の、けっこう離れたところにあるので、外からの客がこちらへやってくることはまずあり得ない(一人の例外はあるにはあったが)。そして生徒や教師は、今の時間まだ全員グラウンドにいるはずなので、建物の外といえども、校舎の周りにはまだ誰もいないはずだった。

 事実、優香が覗いた玄関の周りには、確認したところ、一人の生徒の姿も見えなかった。

 しかし、遠くの校門の方には、ぼんやりとであったが、学校へ出入りする保護者など観客の姿が、ひっきりなしに、通っていた。体育祭の行なわれているグラウンドは、校門を入ってまっすぐ行ったところにあるので、彼らがこちらへ来る心配はないが、しかしちょっと目のいい人間が、ちょっと振り向いて見ただけで、全裸の少女が、何やら校舎の周りをうろついているということが、難なくわかってしまうだろう。

 優香はその人のひっきりなしに出入りする校門の方を見つめながら、なかなか飛び出すタイミングを見つけ出せずにいた。やっといなくなったと思ったら、すぐに外から現われる。誰も来ないと思ったら、グラウンドの方から反対に外に出て行く人間が現われる。往来の途絶えるのは長くて十秒。しかし、その十秒も、あらかじめ予測するのが不可能な十秒である。つまりまったくの運。運に身を任せるしか方法はなかった。

 優香もすぐにそのことを察した。人が通るのも通らないのも運、人がこちらを振り向くのも振り向かないのも運次第。そうして自分は、その当てにならない確率に、人生のすべてを、賭けなければならないのだ。

 そう決心した優香は、校門の出入りが途絶えた次の瞬間、ついに、全裸のまま玄関の外へ飛び出した。

(お願い……! 誰も見ないで……!)

 裸の胸を揺らしながら、全速力で、優香は走るのだった。
  1. 2011/03/06(日) 02:52:20|
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優香 第十二章 5

 全裸に首輪をつけられた格好で、四つん這いで校内を散歩させられるはめに陥った優香。その後ろから、紐を握った男が容赦なく彼女を急き立てる。

「ほら、もたもたすんな。しっかり歩け!」

 そして優香の突き出されたお尻を平手で張ったり、揉んだり、やりたい放題を尽くすのだった。

「ほれほれ、ケツの穴まる見えだぞ。それからおま〇こも、開いたり閉じたり、開いたり閉じたり……」

 その開いたり閉じたりするお尻の穴と、おま〇こを、男は代わる代わるカメラで写し撮る。

「これでもう一生おかずには困らないぜ。ヤラセでもなんでもない、正真正銘の調教AV。本物の女子高生の、それもタレント級の美人ときてる。嫌がる表情も当然リアル……そうそう、もっと嫌がれ、もっとつらそうな顔してごらん」

 屈辱に顔を歪ませる優香の顔がカメラにカップで映し出される。男に好き放題やられて、抵抗することも、声を出すこともできない。やがておま〇こに指を突っ込まれ、いじられまくるが、それを黙って受け入れるしかない自分の立場……

(やめて……触らないで……あたしを、撮らないで……! )

 やがて階段に差し掛かる。階段は危ないので前を向いては下りれない。だから優香は横向きになって、つまり一段一段、膝を大きく開けて(その大きく開いたお尻と股間を至近距離から撮影されながら)下りなければならなかった。急ぐことはできない。もし間違って両方の膝を同時に床から浮かしてしまいでもしたら、せっかく進んだ今までの距離はすべてリセット、また一からやり直しになってしまう。

「おお、大胆だねえ。そんなにおまた開いちゃって。カメラで映されてるってのに、まるで自分から見てくれって言ってるようなもんだね」

 やっと三階の廊下にたどり着いた頃には、優香の膝と手の平は、廊下のホコリで真っ黒に汚れてしまっていた。そして股間は男の執拗な指責めでグチョグチョに濡れてしまっていた。その男の指を出し入れする粘着音が、人のいない廊下中に響き渡り、優香の屈辱感をいっそう高める。

 ピチャピチャピチャピチャ……

(やめて……恥ずかしい……こんなことして喜んでるなんて、最低……ホント最低の人間だわ……!)

「あれー、どうしたのかな。おまた濡れてきちゃってるよ。気持ちいいのかな? 感じてるのかな? ほらほら、もっと激しくして欲しいんでしょ? 何なら声を出したっていいんだよ、でもその場合はもう一度上からやり直しだけどね、ほらほら」

(ああんっ……! いやぁっ……! やめてぇぇっ……!)

 しかし男の激しさを増す指責めにも、優香は必死に声を押し殺して我慢した。だがいよいよ堪えられなくなると、歩くのをやめ、そのまま上体を床に伏せて、一歩も動けなくなる。続いて床に折り曲げた腕の中に顔を沈めて、感覚を遠ざけようと努めるが、突き出さざるをえないお尻は男の指から逃れることができず、お尻は感覚に敏感に反応してしまう。男の指から逃れようと前後左右にお尻を振る、その優香の尻の振り方は、何ともいやらしく、エロティックだった。

「ほら、どうした、ケツ振ってばかりで少しも進んでいないよ。お尻振るだけじゃ前には進めないんだよ、知ってる?」

 そう言うと男は優香の首輪をグイグイ引っ張る。革の首輪が優香の首を締め付け、顔を苦しそうに歪ませる。優香は上体を起こすと、再び階段を下り始めた。

 そうした男のイタズラにも何とか耐えて、やがて二階の廊下にたどり着いた。あともう残すところは一階だけだ。

 が、その最後の階段を優香が下り始めようとしているところを、いきなり男が首輪を引っ張って止まらせた。

「もうあと少しでゴールだね。でも、いいかげん階段ばっかで飽きちゃったんじゃない? ちょっとコースを変えようか。こっちの廊下を渡っていこう」

 そして首を振って嫌がる優香を無理やり方向転換させてしまう。

 いくら首を振っても無駄である。相手にそんな要求は通用しない。やがて優香はあきらめて、男の言う通り、その遠回りになる廊下を進み始めた。

 …………

 それは奇妙な光景だった。しんと静まり返った高校の廊下を、首輪をつけた全裸の女が、手と膝を床について、犬のように歩いている。廊下の真ん中を真っ白なお尻が揺れ動く。全裸の女は唇を噛み締めつつ、顔を真っ赤にして這い進む。なぜならここは、他でもない彼女自身が通う学校の廊下であった。そしてその廊下は、教室へ行くため彼女が毎日のように通っている歩き慣れた廊下であった。しかしいま、その同じ廊下を優香は首に首輪をつけられ、胸も性器もまる見えの生まれたままの姿で、四つん這いになって歩かなければならないのだった。

 三年間通い続けた学校の廊下。いいことばかりではなかったけど、それでも彼女の慣れ親しんだ、温かみのある、この廊下……

「やっぱり学校の廊下はいいねぇ。このピリッとした独特の雰囲気。僕はあんまり学校にいい思い出はないけど、それでもこの廊下の感じは、懐かしいなぁ……」

 と言うと男は立ち止まって、自分の学生時代を懐かしむように、しばらく廊下を見回したり、窓から教室を覗いたりしていた。優香は早く行きたくてしかたない。

「この学校の生徒が羨ましいよ。君みたいな子と毎日一緒の教室にいられるんだからね。君みたいな美人で露出狂の女の子が同級生だなんて、さぞ学校が楽しいだろうねえ。僕の通ってた学校にもすぐヤラせてくれるって噂の先輩はいたみたいだけど、さすがに君みたいな、全裸で校内をうろつき回るような変態はいなかったよ」

(変態……あたしはそんなんじゃ……)

 しかし優香には男のくだらない感傷につきあっている時間はなかった。ぼんやり思い出に浸っている男を引っ張って(首輪が締まって苦しかったが)どんどん廊下を進んで行こうとする。

 が、廊下の半分ほどに達したところで、再び首輪を引っ張られ、立ち止まらされた。

「まあまあ、そんなに急ぐことないじゃない。もっとゆっくり楽しもうよ。あ、わかったぞ。おしっこしたいんでしょう? それでさっきからそんなに急いでるんでしょう?」

 嫌な予感が駆け巡る。優香は男の顔を見上げると、必死に違うと首を振る。

「いや、隠したって僕にはわかるよ。散歩におしっこは付き物だもんね。うっかりして気づかなかった。さあ、いいよ、思う存分おしっこしてね。その教室の壁に向かって、しっかり片足を上げてね」

 優香は夢中になって首を振り続ける。拒絶と、懇願の、無言の意思表示。男の指さした教室の壁というのは、他でもない、彼女の所属する3年2組の教室の壁だった。その自分の所属する教室へ向けて、おしっこをするなんて……

(そんなこと、できるわけないじゃない……!)

 しかし男には優香のそんな感情を理解することができない。グングン紐を引っ張って、彼女をその教室の壁のところまで連れて行く。

「さあ、壁のここへ向けて、していいよ。出るまで散歩は再開しないからね。途中でお漏らしするようなそんな下品な犬には育てなくないからね」

 そしてもう優香の必死の意思表示にも、何の反応も示さなくなる。だんまりを決め込むつもりだ。彼女がおしっこするまでテコでも動かないつもりらしい。

(もう、やるしかないのね……)

 あきらめとともに、壁の方へ這って行く優香の顔は、今まで何とか堪えていた涙が、もういまにも流れ落ちんばかりになっている。優香は壁際にたどり着くと、再び男の顔を見上げて、何とか許してもらえないかと目で訴えるが聞き入れられなかった。やがて優香は左膝はそのまま床についたまま、右足を、ゆっくり教室の壁に向けて上げ始めた。その屈辱的な姿を、男のビデオカメラはもちろんすべて撮っている。

「ほら、もっと高くあげて。そんなんじゃ壁には届かないよ。女の子なんだから、余計に高く上げないといけないよ」

 優香はもう泣き顔になりながら足を高々と持ち上げる。カメラへ向かって見せつけるように、まる見えになった優香の性器、パックリと開かれ、グチョグチョに濡れている。

「よし、そのくらいならいいだろう、あとはちゃちゃっと、用を済ますだけだ」

 しかしその用事はなかなかちゃちゃっとは片付かなかった。もともとそれほどしたくはなかったし、また、場所が場所であるという意識、それからカメラに撮られていることへの緊張から、尿意は近づいてこなかった。

 五分ほどそういった状況だっただろうか。優香はやがてもう恥を捨てて必死にふんばるようになる。もはやおしっこをするという意識はなく、ただただ逃れられないミッションを遂行するということしか頭の中になかった。

 プライドが音立てて崩れていく。恥じらいが消え去っていく……と、ようやく尿意が近づいてきた。

 ちょろちょろちょろー……

「お、やっと出たか、よしよし、その調子、もっと出せ」

 ちょろちょろと勢いの弱いおしっこだったが、そのぶん掛かる時間は長かった。自分の出したおしっこが教室の壁を濡らし廊下を伝う……

 やっとすべてを出し終えたときには、おしっこは彼女の予想以上の水たまりとなって廊下に広がっていた。その中にはおそらく、涙も少し混じっていたかもしれなかった。

 やがて足を下ろして再び四つん這いになった優香は、その廊下に広がる自分の流したおしっこを、何ともいえない悲しそうな顔でしばらく見つめていた。
  1. 2011/03/06(日) 01:18:03|
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