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羞人たち

趣味で書いた羞恥小説 18禁です。

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優香 第十二章 10

 ついに騎馬戦に参加することを決意した優香。短パン、ハチマキ、上半身裸で、これからグラウンドへ向かっていかなければならないわけだ。

 優香は右手で短パンのウエストを、ずり下がらないようにしっかり押さえる。そして左腕で上半身裸の胸を、大きく膨らんだ二つの乳房を、それとわからないよう何とか隠す(遠目に男子生徒として見えることを願いながら)。

 そうして準備が整ったらようやく出発。この校舎の裏のひと気のない通路から、人の大勢いるグラウンドへと、飛び込んで行く覚悟を心に決めて。

 優香はまず通路の奥の校舎の横手へ出る場所へ進んでいった。そこの生け垣の後ろに身を隠して、前方の、校門とグラウンドを繋ぐアスファルトの通りの様子を窺った。

 そこにはやはり道を行き来する観客が、絶え間なく、グラウンドの方へ消えてはまた現われた。いずれも秋ののどかな一日に行なわれる高校の体育祭を観に、平和そのものの表情をして笑ったり喋ったりしながら歩いている。その平和な光景の真っ只中に、いまから自分は、上半身裸のこの姿で、飛び出して行くのだ。人々の平和な顔が自分の姿を見て突如凍りつくかもしれないと思うと、優香の決心は再び揺らぎ出す。

(いや、大丈夫……! 走っちゃえば気づかれはしないわ。全速力で、新幹線みたいに速く走れば、体の輪郭はたぶんぼやけて見えるだろう、たぶん……)

 そう再び決心すると、優香はその、新幹線みたいに速く走り出す(そんなことが可能ならば)タイミングを、生け垣の裏から、じっと窺っていた。

 数分後、ついにそのタイミングはやってきた。それはある意味これ以上ない最高のタイミングといえた。飛び出そうとしているその道に、そのとき突如上半身裸の男子生徒三人組が現われたのだ。紛れもなく優香と同じ格好の、騎馬戦に参加する男子生徒たち。日焼けしたたくましい背中を三つ並べてグラウンドの方へ向かって歩いていく。他に通行人はたくさんいたが、飛び出すなら今しかない、優香はそう思った。今ならあの三人の裸が、自分の裸を(色が白くて華奢ではあるが)違和感なくしてくれるだろう。

 優香はそう思うと同時に生け垣の後ろから立ち上がり、スタートの体勢を整える。そして左腕でしっかり乳房を押さえ直すと(うっかり片方の乳首がはみ出てしまっていたからだ)、ついに表へ向かって駆け出した。

(お願い……! 誰も気づかないで……!)

 新幹線、いや、自分の中ではジェット機よりもなお速く優香は走った。そのせいでせっかく押さえ直した片方の乳首が、乳房もろとも、ぷりんと外にはみ出てしまったが、夢中で走る優香は自分でそのことにまったく気づかなかった。今はとにかく速く走ること、速く走って自分の姿をぼやけさせること……優香の頭はその考えでいっぱいだった。だから自分の肩まで伸びるツヤのある髪が、女性らしく後ろへサラリとなびいていることにも気づかなかった。

 が、その優香の姿を見た人々の実際の反応はどうだったかというと、人間の抱く先入観とは単純なもので、この目の前に突如現われ、背中を見せながら走り去っていく、白い短パン姿の、上半身裸の生徒を見て、これはその同じ道を歩いている裸の三人と同じ男子生徒だろうと勝手に思い込んでしまった。まさかそれが女子生徒だとは夢にも思わなかった。まあ、それも当然といえば当然の話で、上半身裸の女子生徒がいきなり自分の前に飛び出してくるなんて、にわかには信じられないことである。

 もうすぐ始まる騎馬戦の、その集合場所へ向かって歩いていた男子生徒三人は、いま猛スピードで自分たちを追い抜き、走り去っていく、上半身裸の生徒の背中を見て、話し出した。

「あれ、あんなやつ3年にいたっけ?」
「さあ、速くてわかんねえや」
「細っせ~体! 女みてえな野郎だな」
「長髪で、後ろから見たら完全女だよな」
「あんなやつ、騎馬戦始まったら真っ先に叩き潰してやんよ」
「おいおい、あんまり無茶して怪我させるなよ……」
「わかってるよ、冗談だよ、ハハハッ」
「だよな、ハハハッ……」

 こうして、上半身裸でグラウンドへ向かって行った優香は、自分が女であることを一応誰からも気づかれることなく、まずは順調に滑り出した……といえるだろう。

 しかし言うまでもなく、地獄の入口、そして本当の地獄が、このすぐ後に、彼女を待ち受けているわけである。
  1. 2011/03/08(火) 20:58:07|
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